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かじりアト

ややオタク寄り。平凡アラサーOLの独り言

「その女アレックス」ピエール・ルメートル、橘明美訳

本屋で最近よく見かける刺激的な表紙の一冊。

普段あまり外国人作家さんの本は読まないのですが(訳文がどうしても読みづらくて…)、「その女アレックス」は訳し方が上手く、物語がすんなり頭に入ってきました。

橘明美さん、良い翻訳家さんです。

 

 

本作は全部で3つのパートに分けられていて、1部から3部、それぞれでアレックスのイメージがガラリと変わるのが面白いです。

最初は、突然理不尽に誘拐された可哀想な女性としてのアレックス。

木箱の中に幽閉され、徐々に衰弱していく様が痛々しく描かれています。

しかしながら、2部、3部と読み進めるうちにどんどん明らかになる彼女の過去〜現在の姿に、頭の中は右往左往。思いっきり振り回されてしまいました。

 

 

また、アレックスの目線と、彼女を追いかける警察の目線が交錯しながら物語が進むので、非常にテンポがよく、さらに物語が立体を帯びた形で頭のなかに再現されます。

作家のピエール・ルメートルはもともと文学を教える立場にあった方だそうですが、この構成は盤石な知識の上で綿密に練られた結果だと思うと、なんとも恐れ多い気持ちに。

作品の内容とは少し逸れてしまいますが、やはりアウトプットは膨大な量のインプットがあってこそだよな…、と自戒の念にかられてしまいました。

 

 

しかしながら、物語の結末は、個人的には受け入れ難い部分もありました。

3部に入って、自力での謎解き感も薄まり、やや失速した感じを抱いたり。

ただただ、アレックスという女性が哀れで仕方がなかったです。

 

そういったアレックスを通して受け取った感情・思いも、カミーユ(本作に登場する警部)の言葉を借りると

 

突き詰めてみれば、自分もあのアレックスを取り巻く人々と変わらないのではないだろうか。

自分にとってもまた、アレックスは一つの手段だったのではないか。

自分はその手段を利用しただけではないのか。

 

の延長線上に、ただ位置するだけのものなのかもしれませんが。

 

なにはともあれ、非常に読み応えのある作品です。

 

その女アレックス (文春文庫)

その女アレックス (文春文庫)